英検1級・TOEIC900点でも英会話は苦手

英検1級TOEIC900点(ベスト955)、苦手の英会話をNHK語学で学習中。

エンジョイ・シンプル・イングリッシュ『オリジナル・ショート・ストーリー』日本語訳(プラットフォーム/怪物/生まれ変わり/迷子)

 

 

 

 

 

プラットフォーム(Platform Three)

 

ナツコ「すみません。東京行の新幹線は何番線から出ますか?」

駅員「3番線です」

「新幹線は何本くらい出ました?」

「東京行の新幹線は30分ごとに出ます。ですから、今日はもう8本出てますね」

「8本…。わかりました。どうも」

 

ああ、もう8本も出てるのか。信じられない!こんな大切な日に目覚まし時計が壊れてるなんて。あの人が見つかるといいんだけど…

 

ケンジ「ナツコ⁉」

「ケンジさん⁉」

「ここで何してるの?」

「えっとー、あのー…」

 

ケンジさんはこの3月、高校を卒業した。私より一つ年上で、水泳部で一緒だった。

 

「ナツコの声がでかいから、駅の入り口の方まで聞こえたぞ」

「あら!」

「で、今日はどこか行くの?」

「えっとー、父が出張から帰ってくるから、迎えに来たのよ」

「へえ、こんな早い時間に?」

「そうね。ばかみたい。ケンジさんはどこかへお出かけ?」

「実は今日、東京へ引っ越すんだ。言わなかったっけ? 東京の大学に行くんだ」

「ああ、そうだったわね。思い出した」

 

これはうそで、もちろん知ってる。駅に来たのも、ケンジさんにもう一度だけ会いたかったから。

 

「じゃ、もう行く時間だ。またな」

「待って。たまには帰ってくるんでしょ?」

「たぶんね。でもそんなしょっちゅうじゃない。みんなによろしくな」

「わかった」

「よし。じゃあな」

 

これで本当に行ってしまう。言いたいことがあったのに。でも緊張しちゃって、つまらないうそをついてしまった。もう遅すぎる。ケンジさんの大きなリュックが見えるだけ…。エスカレーターでケンジさんがどんどん遠ざかっていく。

 

放送「東京行き新幹線のぞみがまもなく到着します。ご利用の方は3番ホームへお急ぎください」

 

見渡すと、カップルが抱き合ってお別れを言っている。ああ、なんでケンジさんに言わなかったんだろう。たぶんまだ間に合う。

 

入場券を買って、改札を通り過ぎて、階段を駆け上がって3番線へ行く。

 

放送「新幹線が到着します。白線の内側でお待ちください」

 

ホームの人ごみをかき分けて行くのは一苦労。でも、行かなくちゃ。ケンジさんを見つけなくちゃ。ああ、やっと…

 

「ケンジさん!」

「ナツコ⁉ ここで何してるの?」

「あの、言いたいことがあって…。ケンジさん、あの、その、大好き!」

 

(ドアが閉まる)

 

窓越しにケンジさんの顔が見える。笑っているけど、顔が赤くなっている。

急に、まわりの人たちがみんな私を見ているのに気が付いた。でもそんなの気にしない。

新幹線と一緒に走る。ケンジさんが何か言ってる。「手紙書くね」だって。

 

ひそかに自分に言った、「ナツコ、やったね!」って。

 

怪物(My daughter's Dream)

 

「またテーブルにマンガが置きっぱなしだ。片づけてくれないかな?」

「お父さん、それマンガじゃないよ。本だよ」

「本?」

「フランケンシュタインだよ」

「フランケンシュタイン? あの有名な?」 

「そう。大きくなったら、作家になるの」

「作家?」

 

ナレ(

これはびっくりだ。娘は10才。名作を読んでいたとは知らなかった。マンガばかり読んでいるのかと思っていた!

 

「19才の女の人が『フランケンシュタイン』を書いたって知ってた?」

「本当?」

「うん。名前はメアリー・シェリー。イギリスの人」

「知らなかったな。そんなに若い人がそんなに優れた小説を書いたなんて」

「両親も有名な作家だったの。メアリーが赤ちゃんの時にお母さんは亡くなって、お父さんは再婚したの。メアリーは新しいお母さんが好きじゃなくて、毎日、実のお母さんのお墓に行っていたんだよ」

 

「悲しいね」 

「それから、メアリーは恋に落ちるんだけど、お父さんは相手の男の人のことが好きじゃなかったの。だから二人は駆け落ちしちゃったんだよ」

「駆け落ち?」

「そう。でも二人ともお金が無かったから、また戻ってきたの。メアリーのお父さんはすごく怒って。そのころメアリーは『フランケンシュタイン』を書いたんだよ」

「そうなんだ。うーん、メアリーみたいな作家になりたいのか?」

「うん。私が作家になったらいや?」

「そんなことはないよ。きっと作家になれる。でもお前はメアリーとは全然ちがうなぁ。お父さんもお母さんも作家じゃないし、二人とも元気だし。それにお前にはまだ彼氏がいない…。待てよ、彼氏いるのか?」

「は?」

「いつか駆け落ちするようなことがあったら、許さないからな! でも、メアリーみたいになるのなら…」

「お父さん、大丈夫? 心配しないで。私まだ10才よ。まだまだ結婚なんてしないから。好きな人もいないし」

「そうか、よかった」

 

「ただ、メアリーってすごくかっこいいなって」

「かっこいい?」

「そう。19才でこんな本を書いたなんてびっくりでしょ?」

「そうだな」

「私もみんなをびっくりさせるような人になりたい!」

「きっと偉大な作家になれるよ。世界をびっくりさせちゃえ!」

「ありがとう、お父さん」

「で、その本の感想は?」

「えーっと、まぁ、悲しいお話ね。フランケンシュタインはみんなに嫌われちゃって」

 

「は? 本当に読んだのか?」

「えーっと、まだ読み終わってないの」

「それ読んだ人はみんな知ってるぞ、フランケンシュタインっていうのは、その怪物を創り出した博士の名前だってことを」

「本当? じゃ、あの大きな怪物の名前は?」

「名前はないんだよ」

「知らなかった!」

「どのくらい読んだんだ?」

「実は…まだ1ページ目!」

 

ナレ(

まさしく私の娘だ。娘の夢がかなったら、私はうれしい。でも今のところ娘には、子ども時代を十分に楽しんでほしいと思っている。

 

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ほのぼのしていて、心温まるお話でした。

 

生まれ変わり(Palm Reading)

 

 

夫「うん、わかった。明日の夕方にはそっちに着く。電話ありがとう。おやすみ」

妻「お母さん?」

「そう。いい知らせじゃないんだ。今朝、叔父が亡くなったって」

「それはお気の毒に」

「ああ、まだ50才なんだ」

「50才なんて、若すぎるわ…」

「葬儀の手伝いがあるから、明日実家に行くよ」

「わかったわ。叔父さんにご家族は?」

「いや、ずっと独身なんだ。いつも言ってたんだよ、自分は早死にするだろうって。だから家庭は持たないって。その通りになってしまった」

「本当にそんなことを言っていたの?」

「うん。叔父は手相がわかるんだ。たぶん、自分の将来のことがわかったんだね」

「手相? 手のひらの線でその人のことがわかるの?」

「そう。前に、手相の見方を教えてもらったことがある。ちょっと手を見せて。うーん、ああ、これは面白いね。頭脳線と生命線が離れている」 

 

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「よくないの?」

「いや。たいていの場合、独創的で、他の人とちょっと考え方がちがうんだ」

「私、ちょっと変わってる?」

「納得だな。君はプロのイラストレーターだし。独創的じゃなくちゃね」

「まあね…」

「あと、この線はまっすぐだね。正直で、働き者ってことだ。逆境でもあきらめない」

「面白いわ。でも、あなたはどうなの?」

「ぼく? ぼくはこの線が短い。つまり、あんまり感情を表に出さないってこと。ぼくがうれしいのか悲しいのか、まわりの人にはわからない」

「その通りだと思うわ」

「だから叔父によく言われた。もっと感情を出せって」

「それで、今の感情は?」

「そりゃ、悲しいに決まっているよ。ぼくが悲しそうに見えないって?」

「心配しないで。悲しそうに見えるわよ。それはそうと、今度は私が手相を見てあげる」

「手相がわかるのか?」

「少しだけね。えーっと、もうすぐびっくりすることがあるわ」

「ふざけているのか? こんな日に冗談はやめてくれよ」

「あのね、来年、子どもを授かりますって」

「何のこと?」

「その子は1月20日頃に生まれますって」

「ちょっと待って。赤ちゃんが生まれるの?」

「そうよ。今日、病院に行ってそう言われたの。ねぇ、どう思う? うれしい?」

「えーっと、わからないな、なんて言えばいいのかな」

「叔父さんに、もっと感情を出しなさいって言われたんじゃないの?」

「うん、うれしいよ! すばらしいよ!」

「じゃあ、なんでそんなに悲しそうなの?」

「ごめん、叔父さんに報告できないなんて残念だからさ」

「人は亡くなるとね、そのたましいが新しい赤ちゃんに宿るって言う人もいるのよ。この赤ちゃんは、叔父さんの生まれ変わりかもしれないわ」

 

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「叔父さんの生まれ変わり? うーん…」

「だから、パパになるのが楽しみじゃない?」

「もちろん、楽しみだよ。赤ちゃんに会える日が待ち遠しいよ!」

(おわり)

 

手相は詳しくないですが、「生命線長いねー!」って言われます。

 

迷子(My Neighborhood)

 

男性:わたあめいかがですか? あまくて、ふわふわ。まるで空に浮かんだやわらかくて白い雲みたいだよ。やあ、みどり、仕事帰りかい? 8時からカラオケ大会やるんだよ。ぜひ参加して。

 

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みどり:やめとくわ。

男性:冷たいなー。毎年参加者が少なくてさ…。助けてくれないかな?

みどり:仕事でくたくたなの。また今度ね。

男性:わかったよ…。悪かったね。

 

ナレ(みどり

毎年この時期、近所の人たちが集まって夏祭を開く。屋台を出して、にぎやかにやっている。この道をこのまま行くと、また誰かに声をかけられるかもしれない。話したくないなぁ。他の道を通って帰ろう。

 

(男の子が泣いている)

みどり:どうしたの?

男の子:ママがいなくなっちゃった!

 

ナレ(みどり

この男の子、迷子なんだわ。帰りたいけど、小さな男の子を置き去りにはできないし…

 

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みどり:一緒に探してあげるわ。最後にママを見たのはいつ?

男の子:わすれた。

みどり:お名前は? 年はいくつ? ああ、泣かないでね…。そうだ、わたあめを買ってあげる。

 

ナレ(みどり

男の子と手をつないでわたあめ屋まで戻ろう。

 

男性:やあ、さっきはどうも。みどり! 気が変わったかい? カラオケ大会に出てみる?

みどり:悪いけど、そうじゃないの。実は、この男の子のママを探しているの。迷子なの。

男性:うーん、見たことあるぞ。

みどり:知ってるの?

男性:去年引っ越してきた子じゃないか? 雑貨屋さんの所の男の子と同じ幼稚園に行ってると思うんだが。

みどり:うわー、近所のことよく知ってるのねー。

男性:待ってな。友達に電話してみるから。たぶん、なんとかしてくれるよ。

みどり:このおじさんがママを見つけてくれるわよ!

男の子:ありがとう。おねえさん、この近くに住んでるの?

みどり:そうよ。生まれてからずーっと。この辺りの人たちのことはよく知ってるの。

男の子:でも、ぼくのこと知らなかったね?

みどり:えっ?

男の子:パン屋さんのコウスケって知ってる? 

みどり:パン屋さん?

男の子:お花屋さんのユカは? クリーニング屋さんのシゲルは?

みどり:えーっと、みんな知らないなぁ…

男の子:本当にここに住んでるの?

 

ナレ(みどり

男の子の言葉にハッとした。たしかに生まれてからずっとここに住んでいるけど。ここの人たちと長い間話をしていなかった。このままじゃいけないかも。

 

男性:みどり! ママが見つかったよ。ママは向こうのにぎやかな通りのほうを探していたんだ。今来るよ。

みどり:すごーい。あ…、カラオケ大会は8時スタートって言ったよね?

男性:そうだけど。なんで?

みどり:参加するわ。

男性:本当? ありがとう。おい、みんな、聞いたか? みどりがカラオケ大会に出るってさ!

男の子:あ、見て。ママだ。みどりさん、ありがとう。

みどり:ううん、こちらこそありがとう。

 

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男の子:何のこと?

みどり:君のおかげで、ここがどんなに素敵な場所かあらためてわかったから。

(おわり)

 

近くの商店街でも夏祭りやっていますが、だんだん小規模になってます。淋しい気もしますが、カラオケ大会はちょっとパスですね(やってないけど…)

 

『エンジョイ・シンプル・イングリッシュ』レベル別活用法↓ 

www.eigo-memo.com