英検1級・TOEIC900点からのNHK語学

英語講師です。通訳案内士試験合格しました。

エンジョイ・シンプル・イングリッシュ日本語訳『ふぐ鍋』

 

エンジョイ・シンプル・イングリッシュ

『ふぐ鍋』

Blowfish Soup 

 

 

 

ある日、ごん助という若者が佐吉という年寄りを訪ねてきました。

ごん助「やあ、佐吉さん。調子はどうだい?」

佐吉「まあまあだよ、ごん助。今日はやけに寒いんで、魚で鍋を作ったんだ。食べないかい?あったまるよ」

ごん助「そりゃいいね。腹が減ってたんだ。その魚は何だい?」

佐吉「それは…ふ、ふ…」

ごん助「なんだい?」

 

どういうわけか、佐吉は魚の名前を言いたくありませんでした。ごん助はもう一度聞きました。

 

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ごん助「なんて魚か教えておくれよ」

佐吉「それは、まあ、その、ふぐ鍋なんだよ」

ごん助「ふぐだって?ああ、そうだった、もう帰らないと」

佐吉「なんだって?なんで急に帰るんだい?」

ごん助「あー、ちょっと用事を思い出したんだ。腹も減ってないし。昼にいっぱい食ったんだよ」

佐吉「ああ、さては、ふぐが怖いんだろう?」

ごん助「ああ、まあね、怖いね。ふぐ鍋を食って死んじまう人もいるって聞いたからね。ふぐには毒があるんだよ」

佐吉「心配するなって。このふぐはいい店で買ってきたんだ。毒はもう抜いてあるよ」 

ごん助「本当かい?じゃあ、年寄りから先に食っておくれよ」

佐吉「おい、お前こそ先に食ったらどうだ。お客なんだから」

 

ごん助も佐吉も怖がって、ただ鍋をじっと見ているだけでした。

 

佐吉「そうだ、誰か来ないかな。先にそいつに食ってもらおう。それでそいつが元気だったらわしらも食べよう」 

ごん助「そりゃいい考えだ」

 

ちょうどその時、佐吉の隣人の熊兵衛がやってきました。熊兵衛は古紙を集めていました。

 

熊兵衛「やあ、佐吉さん。今日はいらなくなった紙はないかい?」

佐吉「ああ、今日はないね。でも、この鍋をちょっと持って行かないかい?」

熊兵衛「鍋?」

佐吉「そうだ。ごん助と食っているところなんだ。でもちょっと量が多くて。こんな寒い日には鍋がいいよ」

熊兵衛「そりゃいい。ありがたくいただくよ」

 

そう言って、熊兵衛はふぐ鍋を一杯もらって帰っていきました。

しばらくして、ごん助と佐吉は、熊兵衛の家に行きました。二人は戸口からのぞき込んで、熊兵衛が食べているのを見ました。熊兵衛はうれしそうでした。

 

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ごん助「ふん、熊兵衛は大丈夫そうだ。あの鍋に毒はないな」

佐吉「よし、じゃあわしらも食べよう」

 

二人は急いで佐吉の家に戻って、ふぐ鍋を食べました。

 

ごん助「うーん、うまい」

佐吉「ああ、うまいねぇ。熊兵衛にやるんじゃなかった。ハハハ」

ごん助「おれたちで全部食っちまえばよかったな。ハハハ」

 

二人はふぐ鍋を食べ終わりました。ちょうどその時、熊兵衛が佐吉の家にやってきました。

 

熊兵衛「やあ。ちょっと顔を見に来たんだ」

佐吉「やあ」

熊兵衛「あの、佐吉さん、鍋は食ったかい?」

佐吉「ああ、ごん助と全部食っちまったよ」

熊兵衛「なんともないかい?」

佐吉「もちろん。この通り」

熊兵衛「ああ、よかった。それを聞いて安心したよ。じゃあ、帰ってふぐ鍋を食べるとするか」

ごん助「あれ?さっき、ふぐ鍋を食っていなかったっけ?」

熊兵衛「ああ、あれはみそ汁だよ」

 

 

昔の人は、食べるのも命がけ。「なんとなく食べてはいけない」by松岡修造。