英検1級・TOEIC900点でも英会話は苦手

英検1級TOEIC900点(ベスト955)、苦手の英会話をNHK語学で学習中。

エンジョイ・シンプル・イングリッシュ日本語訳『空き箱』

 

エンジョイ・シンプル・イングリッシュ

『空き箱 An Empty Box 』

 

 

 

空き箱 An Empty Box

 

私の夢は、マラソンの世界大会で優勝することだった。

高校のとき全国大会で3位になって、特別トレーニング・プログラムのメンバーに選抜された。毎日走って、マラソンのことだけ考えていた。とても速く走れるようになり、世界大会に出られると確信していた。

 

でも、そうならなかった。チームが出発する直前に、足を痛めてしまったのだ。それでマラソン選手としてのキャリアは終了。その後、私の心は空っぽになった。空き箱みたいに。布団から出る気力もなかった。

 

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私を救ってくれたのは、コーチだった。私が新しい生活を始める準備ができるまで待ってくれた。決して、こうしなさいとか言わなかったけれど、いつもそばにいてくれた。

数ヶ月が過ぎて、私はもう空き箱ではなくなっていたことに気づいた。コーチは、少しずつ、私が自分を取り戻すのを手助けしてくれた。

 

そして彼は私の最愛の人になり、私たちは結婚した。彼はその後もランナーの指導をしていたけれど、私の前で走ることについては何も言わなかった。たぶん、私につらい思いをさせたくなかったのだろう。

 

2~3年が過ぎて、私の人生にもう一人メンバーが加わった。夫にそっくりな赤ちゃんだ。

 

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私はとても幸せだった。でも、幸せは突然終わりを告げた。

 

最愛の人を失ったのだ。ある日、彼は仕事に出かけたまま帰ってこなかった。私はこわくなった。愛する人を失うなんて。

 

赤ちゃんまでいなくなったらどうしよう…。そして私は再び空き箱になった。この子を幸せにするためなら、なんだってやらなくては。

 

それ以来、私は一生懸命働いた。働きすぎて、夫の死を悲しむ時間もないくらいだった。

 

5年が過ぎた。ある日、新しい町へ引っ越す準備をしていたとき、夫の日記を見つけた。日記はクローゼットにあった。日記にはこんなことが書いてあった。

「彼女がもう一度走る姿を見たい…」

 

私は涙が止まらなかった。どうして生きている間に言ってくれなかったのだろう?

 

夫の日記を読んで、ある決心をした。私は、もう一度走る。地元のマラソン大会に向けて準備を始めた。「私は大丈夫だよ」と夫に見せたかった。

 

息子「本当にがんばってるよね、ママ! 心配ないよ!」

 

信じられない! 息子は夫にそっくりだ! 私は急に泣きたくなってきた。

 

息子「ママ? 大丈夫?」

母「うん。あなたがいるから。もう空き箱じゃないわ」

息子「は?」

 

私はもう二度と空き箱にはならない。夢はかなわなかったけれど、私の心は愛する人の思い出でいっぱいだ。それに、私には息子がいる。だから前に進める!

 

息子「ママー! がんばってねー!」

 

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阿久悠さんは著書『清らかな厭世』で、「人はある日突然不幸になるが、ある日突然幸せになることはできない」と述べていました。最近、このことを頭の片隅に置いて生きています。